殆ど日の出と共に起床。今日は天気が良くなりそうな予感。懸念していた大陸のヒトビトも殆ど気にならず熟睡したし。
珈琲をたっぷり点ててパンとバナナの朝食を済ませ、テントを畳み、さぁ出発だ。今日は「因縁の」根北峠を制覇するのだ。
・・2006年ゴールデンウィーク、この年の北海道は過酷だった。エアターミナルを出た小生を待っていたのは鉛色の空と、うなる風だった。
その日は東の果てを目指してバイクを走らせていた。天候は悪化の一途をたどり、網走を過ぎる頃にはみぞれ混じりの強風が真正面から吹き付けていた。
東の果てを目指して走ったのだが網走辺りから雨はみぞれに変わり、斜里辺りで遂に雪になってしまい、初めてライダーズハウスにころがりこんだ。

その時の翌朝の様子。
自然には逆らいようも無く太平洋側をめざしたが「根北峠」を越える事は出来なかった。
つまり、僕の中では「根北峠」は、いわばのどに刺さったトゲの様なモノだったのだ。
いつかは克服?しなければならない「約束」の様なものだった。
まだ寝ている人達に出来るだけ迷惑を掛けない様に撤収した。さぁ、出発だ!
国道333を東に向かって誰も通らない道を快走。全く調子の良い「準・クラッシックカー」だ。
信号で停まって発進する時、隣の車から妙な音がする。整備不良か、可哀想だな・・。
・・・・?・・?!・・!!!・・えぇっ、本当ですかっ!!アウディの音なの?ぢぶんの車から出ている音なの??現実を直視すると、たしかに左前輪から異音がする。
「キー」って云う様な音。極々小さいのだが、確かにしている。
直ぐさま停車。停車中は各ギアポジションで音は出ない。動き出すと・・あぁ、するよ!
ギア各ポジションと、ニュートラルで空走しても「スル」・・ベアリングか等速ジョイントか・・最悪、オーバーホールしたA/Tなのか・・?終わった・・旅も、そして・・アウディも。
いつかはこんな別れがやって来るのだと、思ってはいた。「会うは別れの始まり」理解はしていたが、今日がその日になってしまったのだ。
車の悲鳴を聞きながら、まだ何とかなるのではないか・・と、ボンネットを開けられる駐車場を探した。

「仁頃名水PA」に滑り込み、ボンネットを開けようとした・・ナント!!開かないっ!!何故なんだ?

まるでアウディが「診られたく無い」と言っている様だ・・なだめて、すかして、何とかボンネットを開けて、点検を始めた。目視で判る異常は無い。
エンジンを始動し、フロアブレーキを一杯に引き、各ギアポジションでの音の変化を聴いたが・・異常は無い。
何とか走行出来ないかと場内をそろそろと試走すると、異音は更に激しさを増した。
・・・どうしよう。JAFを呼ぶか?旅を中断して主治医の元へ送らなければ・・治せるなら、なんとか治してやりたい・・。
大きな町なら外車を診てくれる車屋も有るだろう。そう考え始めた。網走・・か?・・そうだ、北見へ行こう!北見なら大きな町だ。きっと診てくれる人が居るに違いない!!。
パーキングから発進する時にはひときわ大きな音になり、恥ずかしいやら心配やらで・・何時シャフトが外れるのか、発煙するのか本当に心配した。
308を経て39へ。北見迄はほんのわずかな距離では有ったけれど、恐ろしく遠くに思えた。
連休の北見の街は早朝もあってか静かだった。
僕と、傷ついたアウディは助けを求めて静かな街を走ったのだった。
つづく
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